Dftf ver2.0

某家庭科教員の個人記録。

絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか: 空間の絵本学   矢野 智司 (著), 佐々木 美砂 (著) 勁草書房

 

一言:「なぜ一列に歩いているのか」だけではない、絵本のいろんな構成のすごさがみえてくる。引用されている絵本を一度すべて読んでみたい。

 

タイトルそのままに興味を惹いて読んでみたが、とてもしっかりと類型をつくって分析をしている研究内容だった。

積み木型、入れ子型。そのように類型をとらえて読んではいなかったが、改めて言われると、なるほどと膝をうつ。そして誰しもが感じたことのある「自分が絵本のストーリーに溶け込んで心を打つ感覚」(本書では「溶解体験」と呼んでいる)のおもしろさ。均衡回復のストーリー、折り重なりを経てのカタルシスに向かう表現、ヒトではなく動物を用いるといった要素が、その体験を可能にする装置となっている。

絵本をこんなにも分析的に読むこともそうないと思うので、新たな視点が拡がる一冊であった。