Dftf ver2.0

某家庭科教員の個人記録。

これからの男の子たちへ 太田啓子著

 

 一言:昨今のジェンダー意識や観念の変化は、長い転換期の真っ最中だと自分の中では考えている。

 

本著は「有害な男らしさ」とはなんたるかを、とても丁寧に指摘し、男の子へのメッセージとして、こうあってほしいという想いが伝わりやすい書かれ方な点は非常によかった。

 

それでもやっぱり、説諭っぽくなってしまうのは、テーマや関係性ゆえの仕方なさか。

(客観的な場がどうかはかな~り疑わしいが)10代の男の子集団と対峙する場に身を置く身として、当然本著で指摘されるような場面には遭遇する。その時に、それは違うと否定するだけだと、「会話の筋力」が乏しかったり、「自分の感情への解像度」が低い彼らは対話ができず、関係性がこじれて終わってしまう。寄り添いのアプローチをしないといけない。そうした寄り添いは、男女に限らずやっぱり必要なものなのかもしれない。

「特権」に属していて、無意識の性差別を無意識に抱く社会で過ごしている彼らだが、そこから「逸脱」するという子たちも少なからずいる。
そんな変わろうとしている子に、「そこ(ホモソーシャル集団)に属していると危険だ」という指摘や、「そこにいるから君たちは有害な男らしさを持つかもしれない」というばかりでは、「逸脱」して変わろうとしている人からするとうんざりするだろう。
「男であるだけで…」という論調は、それこそ彼らを呪縛する。

「私は今変わろうとしているのに、言われちゃうのか…」という心理的リアクタンスを抱かせたくはない。なにより10代の子たちがあまのじゃくなのは、今に始まったことではない(これはこれで「決めつけ」でよくないか。)


転換期を過ごしてきて、彼らは少しずつ変わってきている。その変化を見逃さずに救い取りアシストしながら、気づかぬところに気づいてもらうようなアプローチをしていきたい。そんなことを考えさせられる本でした。